危機管理(コラム)

依然として横行する偽札(2000年5月)

依然として横行する偽札


店員「これ受け取れない」
筆者「なんで?」
店員「この50元札、ニセモノ」
筆者「えっ、でも水印が入っているし、どう見ても本モノじゃない?」

※水印は中国語で「透かし」のこと


手で触っただけであまりにも自信満々そうなので、更に複数の店員に尋ねたが、やはり判定は「アウト」だった。それでも平然としている筆者と店員に、同行していた中国初めての日本人は「警察に届けなくていいんですか?それ、日本だったら大騒ぎですよ」と愕然としてしていた。


言われてみると確かに紙質が微妙に違うようだ。が、日頃人民元に慣れているつもりでもこの違いを短時間で判断するのは難しい。


「あっ!」その瞬間に前の晩の出来事を思い出した。お客と上海市内をタクシーで移動中、目的地まで到着する寸前の場所で、運転手が「ここで(タクシーを)下りて歩いてくれ」と言いだした。特に交通規制が敷かれている様子でも無く、案の定上海人典型のうぬぼれた輩が、ここを曲がると帰りが遠くなる等と理不尽な自己主張を宣った。


後部座席にはアテンドしている客を乗せていて、歩かせる訳には行かないので、多少強引に「お前はサービス業失格だ!」と激しい北方訛で捲し立て、言い返す運転手を論破し従わせた。こちらに凱歌が上がったと多少気分が良かったのもつかの間だったのだ。


言い争いで負けたフリをして、こちらが出した100元札へのお釣りにちゃっかり偽札を掴ませたのだ。うっかりしていたのだがレシートを貰っていなかったので後の祭りだ。


タクシー運転手なので上海人で無いかも知れないが、久しぶりに上海人の厳しさを1日遅れで再認識させれらた。100元札が偽札ではないかと常に疑う気持ちは当然刷り込まれていたが、50元札のことは完全に眼中に無かった。


やはり1999年末より市中に流通し始めた「新100元札」の影響か、偽造グループも手間暇のかかる100元札の偽造は諦め、まだ新札が発行されていない50元札の方にシフトしているのだろうか?


このことがあって以降、タクシーをおりる時に注意して見ていると、例えば50元の紙幣を客から受け取るときに、運転手は填めていた「手袋」を取って、必ず素手で受け取っている。彼ら自身の微妙な手先の感覚によってババを引かない様に防御しているのだ。


この一件で学んだことは、完全に安心出来ない場所で安易に高額紙幣を出し、お釣り特に50元札をもらうことは避けた方が良いということ。地元の人間の方が出張者よりも熟知している訳で、彼らが悪意を持って何かをしようとしたら防ぎようが無いことも実感した。

危機管理 自らのパスポートを売る日本人の弊害(1998年10月)

出張者には気づかない増大する社会不安


とにかくひったくり被害が増えていると言う。不景気になるとひったくり犯罪が増えるというが全世界共通のようだ。 以下現地で聞いた具体的な事例を挙げる。


◎事例1(北京)


夜間、道を歩いていると向こうから人が道を尋ねてくる。
相手が地図を持っていて、地図を広げて道を説明しようとした瞬間、地図の中仕掛けてあった薬物を吸い込み一瞬激しい頭痛がする。その間に 金品を奪われる。または同じようにアンケートを装って近づき、何かの 薬物を仕掛けられてひるんだスキに金を奪われる。ヤルのは主に東北人 だという。 温厚な東北人が何故?だが、北の方は相当に不景気で仕事を失った人が大都 市に流れ込んでいるとのこと。当然仕事は無いので、日々の稼ぎもないため こういった犯罪に及ぶようだ。殆どが夜間に発生している。


◎事例2(北京)

車の走行中に前方に故障車を発見し、止まってくれとこちらに手を振る ので車を止めて様子を伺うと、複数の人間が勝手に車に乗り込んで来て、 車や金品を強奪される。 これでは親切に車を止めてあげたことが仇になる。 このケース、偶々3人ほどが乗車していて、後部座席のドアはロックされて いたため、犯人で侵入できたのは1人だけだった。車は急発進し離れたとこ ろで1人を車外に叩き出した。仮に相手が凶器を持っていたらお陀仏である。


◎事例3

お客と飲んだ後、店の前でタクシーに乗せたお客を見送り終わった瞬間 に複数の男に鞄をひったくられそうになり犯人と格闘。鞄は奪われなかっ たものの本人は鼻骨を骨折。 単純なひったくりだが、ある程度目を付けられていたようだ。相手が多数の 場合は完全にやられてしまう。


手の込んだ犯罪手法と事例から学ぶこと


最近の犯罪は非常に手が込んでいる。下記は筆者の知人が実際に間一髪体験 したことだが、その代表格だろう。


◎事例4(広東省)

人気の無い横断歩道に何故か人民元の札束が落ちている。横断歩道の反 対側から出てきた人間が辺りを気にしながら、自分の鞄にしまい込んで、 こちらの方に近づいてきて言う。「今、お前(一部始終を)見てただろ う、あっちにいって山分けしよう」少し離れた場所に連れて行かれ相手 が話を始めると、向こうからヤクザが猛然と突進してきて「お前たち、 俺の金をねこばばしただろう」と因縁をつける。すると「ねこばば」し た本人はさっきの金を押しつけ逃げてしまう。


濡れ衣を着せられて、強烈な因縁をつけられアリ金を巻き上げられる。 もちろんこの2人は「ぐる」である。 ヤクザまがいの人間が難癖をつけてきた時点で、筆者の友人はピンと来て全速力で逃げたため事なきを得ている。


お気づきかもしれないが、外国人だから狙われるという図式ではない。それだけ金を持っている中国人が多いことと、国内で貧富の差が激しくなってい ることが伺える。また社会が激しく変化しているため、それについて行けない人間が増えていることがはっきり判る。それだけ社会不安が増大する傾向 にあるということだ。


殆ど全ての犯罪が夜間に発生していて、夜間の単独外出は格好の標的になる。 無目的な外出、特に人気のない道への外出は控えるべきだろう。不審な動きには自分から関わらないことも重要だ。
出張先に駐在員がいれば最近の状況 をヒアリングするのも良い。 また筆者が以前から指摘している「中途半端な中国語が出来る故に被る犯罪 被害」があることに、今一度読者の注意を促したい。


相手が無差別に殺しにかかってきたなら確かに防ぎようがない。
ただ、犯罪 被害にある確率が千分の一ならば、それを一万分の一にする努力は誰でも出来るハズだ。


パスポートを売る日本人の弊害


信じがたい話だが、日本への密航をアレンジする組織「蛇頭」に自分のパスポートを売る日本人がいるという。 蛇頭と来れば、賢明な読者は筆者が何処で拾った話か察しがつくだろう。


日本で借金を抱えまくったいわゆる多重債務者が日本の黒社会に指示される まま中国に渡ってきて、提携先の蛇頭に自身のパスポートを売り債務の返済 に充てるという。値段は5万元程度で買い取られ、写真を巧妙に貼り替えた 後、日本にどうしても行きたい中国人たちに転売される。


売られたパスポートを持った中国人が無事日本に入国できた(勿論不法に) 時点で、その日本人は公安に紛失届けを出し、証明書をもらい領事館で再発 給を受け帰国する。そんな図式が成り立っていて、目的のないブラブラした 日本人が何人もいるとのことだ。


これだけなら真面目な出張者は何も関係が無いだろう。だが、最近そういっ た不良日本人の存在が原因で、公安はパスポートの紛失届けを受理した際、 本当に紛失したのか詳しく調査をするため、1ヶ月間は本人にその土地に留 まってもらう方針だという。公安関係者から聞いた話なので確度は高い。


つまり仮にパスポートを事故で紛失した場合、盗まれた場合、そういった人 間たちと一緒にされ、理不尽な足止めを喰らった上、出国出来ない可能性が あるのだ。一部地域に限定された話ゆえに大げさに書くつもりはさらさらな いが、パスポートの紛失にはくれぐれも注意願いたい。

危機管理 犯罪に巻き込まれないために(1998年9月)

スリグループ(窃盗団)の存在


過去に直接目の当たりにした事例を紹介しておく。


【ケース1・香港】


尖沙咀のペニンシュラホテルと科学館を挟んだ道の横断歩道を渡ろうとしたところ、車道の車が突っ込んで来たため、避けようと横断を止めたら後ろの人がぶつかってきた。お互いに申し訳ないと謝ってその場を立ち去ったが、被害者は後で貴重品をすられたと気がついた。


【ケース2・北京】


ある駐在員が日本食(居酒屋)レストランで食事中、自分の座ったイスにかけておいた上着の内ポケットから、見事に財布を盗まれた。目の前で知らない間にヤラレタわけだが、後で思い出すと隣のテーブルの知り合いと思われる人間たちが何人か通路に立ったまま話をしていた。


この店はホテル内にある日本料理ではなく、独立系居酒屋で客はローカルの人が殆どであまり綺麗な店とは言えない。場所はルフトハンザの近く。


ケース1、2ともスリグループ(窃盗集団)の仕業である。ケース1ではブレーキを踏んだ車の運転手と後ろからぶつかってきた人間がグルであり、ケース2では通路に立っていた複数の人間がグループだ。上着をイスに掛けた被害者本人の前には一緒に飲んでいた連れの人間がいたので、何か不穏な動きがあれば直ぐに気づきそうなものなのだが、視界を見事にブロックされていた。


被害金額は共に100,000円を超える大きなモノになってしまった。公安に届けようが、現金は保険では補償されない。当然の事ながら出てくるハズもない。


被害者本人が迂闊だった言えばそれで終わってしまうが、犯人はプロでしかもグループで動いているわけで巧妙だ。素人個人が防げるものでもない。如何にそのような人間たちにマークされないようにするか、この辺がポイントになる。


ホテル内は安心か?


都市部のそこそこのホテルならば、教育もサービスの意識も格段に進歩しているので、心配は無いと思われる。但し、ポケットに入る大きさの貴重品をベッドの上やテーブルに放置しておくのは絶対に避けるべき。


田舎のホテル、星の少ないホテルに宿泊した場合は要注意だ。部屋の中にいるのに服務員が用もなく勝手に部屋に入って来るのに何度か出くわしたケースがある。


使っていない(宿泊の無い)部屋に何人かの服務員が忍び込んで、電話を使ったり、酒盛りをしたという事例はいくつも聞いている。客に使われていない空き部屋と思って入ってくるのか、何かをするつもりなのかは判らないが、最近はまともになっていると思う。


人を疑うのは良くないと思われる方もいると思うが、それは日本の中で生活している場合であって、海外なら警戒にも警戒を重ねて損をすることはない。日本人ほどその辺がルーズで後で大騒ぎをする人種はいない。


セーフティーボックスは確かに安全だが、早くチェックアウト手続を済ませたい時など手間取るケースがあり利便性はあまり良くない。


部屋の中に金庫が用意されている部屋が沢山あるが、ホテルによって使い方がまちまちであり、巧く使えない場合もあるのでお勧め出来ない。パスポート、現金、T/Cなど貴重品は鍵のかかる自分のトランクの中に入れておき、鍵を携帯するのが取り敢えずは現実的な気がする。外部からの本格的?窃盗団でも無い限りホテルの部屋からトランク毎盗まれることは、まず無いのではと思う。


ノートパソコンも貴重品同様に管理には十分に注意したい。盗まれないまでも、弄られておかしくなっては大変である。

駐在員や長期出張者がヤラれる?

単純なポン引きに引っかかる人は少ないと思うが敵もさるモノ、一度目にそこそこ信用させ2回目で地獄の底に突き落とすパターンがある。


当然ポン引きとの出会いは街中で、巧妙に声をかけるのだが、中国語が出来ない出張者ならこの誘いには乗らない。これにはまってしまうのは、中途半端な中国語が出来るレベルの人間達だ。具体的には現地駐在員や長期出張者、現地での生活に慣れ、中途半端に言葉が判るが故に、まんまとはまってしまう。


そこそこのサービスのカラオケ(勿論小姐がいる)に連れていき、リーズナブルな料金で済ませる。そして2回目にボッタクルという極めて巧妙な手口だ。安心している分だけ、メニューに値段があるかなどの基本的チェックを怠るのだ。


スリに遭った被害者も、実は長期滞在者が多い。生活を始めた当初は環境に慣れていないので、神経を使うのだが、何も起こらなくだんだん日本と同じではないかと思い始める。自戒の念も込めてだが、これは慢心以外の何者でも無い。


スリ被害をを防ぐためには


基本中の基本だが多額の現金は持ち歩かない。


食事中、鞄やバック、上着は絶対にイスの後ろにかけない。上着は貴重品を抜いて目立つどこかに掛ける。


パスポートを携帯しても、あまり使う場面がない。パスポートはホテルの部屋に鍵のかかるトランクに入れて置く。非常用にコピーなどをとっておき財布にでも入れておけば良い。


などは必須と思う。


海外旅行傷害保険加入のススメ


盗難や急病など予想もしないことが起きてしまってからでは遅いので、出発前には海外旅行傷害保険に加入しておくことを勧める。特に盗難に関しては、携行品保険があるので、何かしら盗まれても何とかカバーできると思う。


帰国後の保険金の求償だが、盗難に関しては中国公安の盗難証明が無くても、周囲の人間が事実を証言(文章)で十分に被害が認定される。


証明を貰おうと思っても、よほどの中国語力が無ければ、公安の調書作成に対応出来ない。即ち事故(被害)証明も出ないと思われる。


外国人が被った被害証明書の作成、受取は別の場所に出向かなければ行けないから(上海の場合は漢口路の公安外事課、北京の場合は日壇路?)、短期間の滞在で時間を割くことは困難だろう。


破損に関しては帰国後の修理見積書で保険金額が決まるので、それほど心配することはない。


但し、損保会社が設定しているいわゆる「パック」に入る必要は全くない。保険の掛け金が高いだけで不必要と思われる項目も一緒になっており、必要な項目だけに対し、保険金を設定すればかなり安くなる。また年に数回出張する人であれば、長期で海外旅行傷害保険に加入しておいたほうが、毎回いちいち心配しなくても良いし、保険料も割安になる。


下記は筆者が契約しているパターンだ。


傷害・死亡高度障害 1000万円: 2260円
傷害・治療費用 200万円: 1550円
疾病・治療費用 200万円: 7190円
携行品 30万円: 3710円
救援者費用 250万円: 870円
賠償責任保険 1000万円: 130円

合計 15,710円


保険期間は5ヶ月(何故5ヶ月かは後述する)、おそらくセットの傷害保険でこんなに低い設定は無いと思うので、びっくりする読者もおられると思う。が、500万も 600万も加入しても、実際に満額支払われる訳ではない。中国ならこの程度で十分なのではないか。この保険で掛け金が一番高いのは疾病・治療費用だ。これが全体のかなりの金額を占める。

最近始まったのだが、6ヶ月以上の長期契約の場合、疾病・治療保険料(掛け金ではなく、受け取りベース)が有る一定金額以下では契約出来なくなってしまった。この部分が大きくなれば、保険料の掛け金も大幅にアップする。そこで期間を6ヶ月未満に設定すれば、 200万円程度の低い保険料設定も可能である。